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従業員の給与や賞与は
銀行から借り入れて良いの?
はじめに
中小企業の経営者の中には、「一時的に資金が不足しているから、従業員の給与や賞与の支払のために銀行融資を利用したい」と考える方もいるでしょう。
結論から言えば、「給与や賞与に充当する目的で融資を受けてはいけない」という決まりはありません。ただし、頻繁に人件費を借入に頼る状況は、企業の財務体質に対し金融機関からネガティブな評価を受ける可能性もあり、長期的な視点で見るとリスクが伴います。
本記事では、給与・賞与を銀行からの借入で支払う場合のメリット・デメリット、金融機関が重視するポイント、代替策などについて詳しく解説します。
1. 給与・賞与を借入で支払うケースは珍しくない?
従業員の給与や賞与を借入によってまかなうこと自体は、それほど珍しいことではありません。特に売上の入金タイミングと給与支払のタイミングが合わず、一時的に資金繰りが厳しくなるケースは中小企業ではよく起こりえます。
「どうしても月末・期末に手元資金が足りない」という時期に、当座貸越や短期融資(手形貸付など)を利用して給与を支払い、入金があった時点で返済するという方法を取る企業もあります。こうした「ブリッジ(橋渡し)」としての借入は、一般的に行われています。
2. 銀行借入で給与を支払うメリット
2-1 従業員への信頼維持・離職リスク低減
給与や賞与支払の遅延は、従業員のモチベーションを大きく下げるだけでなく、最悪の場合、離職や労働トラブルに発展するリスクがあります。銀行から一時的に借入を行って給与をきちんと支払うことで、従業員の信頼を損なわずに済むのは大きなメリットです。
2-2 突発的なキャッシュ不足への対処
売上が好調でも、入金サイトが長かったり、想定外の支出が重なったりすると、給与や賞与の支払が追いつかなくなる場合があります。そんなときに融資を利用して素早く資金を確保できれば、経営難に陥ることを防ぐことが可能です。
2-3 その他の資金ニーズに余裕を持たせる
給与・賞与を借入によってまかなう分、社内の運転資金を別の用途に回すことができます。たとえば、仕入や設備投資に充当するなど、経営戦略上有効な使い道に資金を投入する選択肢もあるでしょう。
3. 銀行借入で給与を支払うデメリット・リスク
3-1 財務体質の不安定化
融資を受ければ返済義務が生じ、利息負担もかかります。人件費の支払に借入を利用するということは、売上から利益を得る前に「お金が出ていく体質」である可能性を示唆する面もあり、これが慢性化すると財務体質が不安定になるリスクがあります。
3-2 金融機関からの信用懸念
給与・賞与の支払は企業にとって基本的なキャッシュアウトフローであるにもかかわらず「日常的に借入でまかなっている」状況が続けば、金融機関から「経営が不安定」「本業で十分なキャッシュを生み出せていない」と判断されかねません。将来の追加融資や条件変更が難しくなる恐れも考慮する必要があります。
3-3 借入返済の負担増
返済期限までに入金が滞ったり、新たな支出が発生したりすると、さらに資金繰りが悪化して次の給与支払に影響が出ることも考えられます。借入によって一時的な問題を先送りするだけの状態に陥ると、経営の根本的な改善を妨げる可能性があります。
4. 金融機関が重視するポイント
4-1 資金使途と返済計画の明確さ
給与や賞与に利用する資金であっても、金融機関は「なぜ資金が不足しているのか」「いつ、どのように返済するのか」を重視します。 資金不足の原因と返済原資の根拠を示すことが必要です。
具体的には、将来の売上計画や回収予定、あるいは固定費削減の取り組みなど、借りた資金をきちんと返すことができるというシナリオを提示できるようにしましょう。
4-2 キャッシュフロー管理の体制
資金繰り表の作成や月次決算の実施など、経営管理がどの程度しっかり行われているかも重視されます。給与や賞与の支払が不足している状況であっても、「この時期は入金タイミングが遅れるが、〇か月後には入金があり返済できる計画である」といった説明ができれば、金融機関の印象は変わる可能性があります。
4-3 リスク管理と改善策
頻繁に給与支払のための借入が続くようなら、根本原因を改善する必要があります。金融機関としては、どのように収益力を向上させ、売上・コスト構造を改善していくのかといった、長期的な経営戦略にも注目します。
5. 給与や賞与支払のための代替策
5-1 キャッシュフローの改善努力
支払・回収サイトの最適化
仕入先や取引先との間で、入金と支出のタイミングを調整します。
在庫管理の徹底
不要な在庫に資金が固定化されないよう、需要予測や在庫回転率を見直します。
経費削減や固定費の見直し
不要な支出を洗い出しや、リースやサブスクの契約内容の再評価を行います。
5-2 補助金・助成金、短期的な資金調達
各種補助金や助成金の活用
人材育成や雇用維持に関連する助成金が使える可能性もあります。
手形割引やファクタリング
売掛金を早期資金化することで、一時的な給与・賞与資金を捻出できます。
当座貸越枠の活用
事前に銀行と、決められた限度額の範囲で随時借入ができる当座貸越契約を締結しておくことができれば、必要な時に必要なだけ資金を引き出す運用が可能です。
5-3 資本増強や増資の検討
自己資本の拡充
事業計画を見直しながら、出資者を募る、あるいは代表者の自己資金を投入するなどして自己資本を増やす方法も考えられます。
社内留保の強化
既存の利益を留保し、人件費を安定的に支払える体質を作ることが理想的です。配当を抑えるなどして社内にキャッシュを残す取り組みが必要になる場合もあります。
まとめ
給与や賞与を借入でまかなうことは、短期的には有効な手段となる場合がある反面、慢性的に人件費を借入に頼る状況は望ましくありません。金融機関は「本業のキャッシュフローで人件費がまかなえないのはなぜか?」といった点を注視するため、同様の状況が続けば信用力の低下に直結する可能性があります。
メリット
一時的な支払不能リスクを回避し、従業員との信頼関係を守れる
急なキャッシュ不足を救済でき、経営の継続性を保てる
デメリット・リスク
長期的に見ると財務体質が不安定化しやすい
金融機関からの評価が下がり、今後の融資に悪影響を及ぼす可能性がある
返済の先送りが続くと、資金繰り悪化を深刻化させる
制作日:2025年3月
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