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どんぶり勘定からの脱却、
会計ソフト導入による業務効率化

はじめに
中小企業において、「現金や売上をざっくりとしか管理していない」「経費の詳細を把握できていない」といった、いわゆる“どんぶり勘定”で経営が行われているケースは少なくありません。どんぶり勘定の状態が続くと、利益を出しているはずなのに資金繰りが厳しくなったり、経営判断に必要な情報をタイムリーに得られなかったりという問題が起きやすくなります。
一方で、会計ソフトを導入するなどして適切な財務管理を行えば、経営状況を正確かつ迅速に把握でき、利益改善や業務効率化にもつなげることが可能です。本記事では、どんぶり勘定からの脱却がなぜ重要なのか、そして会計ソフト導入によるメリットと導入の進め方について詳しく解説します。
1. どんぶり勘定の問題点
1-1 経営の現状把握が困難
どんぶり勘定のままでは、「今月どれだけ利益が出ているのか」「どの部門がどのくらいのコストをかけているのか」といった情報を正確に把握するのは難しくなります。結果として、売上が増えているはずなのに資金繰りが苦しい、あるいは無駄な経費に気づけないといった事態に陥る可能性があります。
1-2 経営判断の遅れ・誤り
経営判断の根拠となるデータが曖昧だと、投資やコストカットを行うタイミングを逃してしまいます。また、利益計算や在庫管理がずさんになると、税務上のリスクが高まったり、取引先や金融機関との関係にも悪影響を及ぼしたりする可能性があります。
1-3 人的ミスが発生しやすい
どんぶり勘定では、データを頭の中や手書きメモなどで管理しているケースが多く、人的ミスのリスクが高まります。レシートや請求書が散乱して管理が追いつかない、伝票の入力ミスに気づかないなど、後から修正が発生してしまう可能性があります。
2. 会計ソフト導入によるメリット
2-1 リアルタイムでの経営状況把握
会計ソフトを使えば、売上・経費・利益といった情報が自動的に集計・反映されます。インターネットバンキングやクレジットカードとの連携機能があるソフトなら、入出金データが日次で自動取得されるため、リアルタイムに近い形でキャッシュフローを把握できるようになります。
2-2 計算や仕訳の自動化によるミス削減
取引データを自動仕訳する会計ソフトも多く、人力での入力作業を大幅に減らせます。ミスや重複入力が少なくなり、経理担当者の負荷が軽減されるほか、税務申告書類の作成や決算業務もスムーズに進められるようになります。
2-3 税務申告・決算業務の効率化
多くの会計ソフトは、決算書作成や税務申告に必要な書類のフォーマットを標準装備しており、日々のデータがきちんと入力されていれば、書類を半自動で作成することが可能です。また、税理士や会計事務所とのやり取りも簡易化し、やり取りのスピードアップやコスト削減につながります。
2-4 業務プロセスの“見える化”
会計ソフトを導入すると、経営のあらゆるプロセス(仕入、売上、在庫、経費処理など)を一元管理しやすくなります。「どの部署がどれだけコストを使っているのか」「どの商品やサービスが最も利益貢献しているのか」といった分析が容易になり、戦略立案に役立ちます。
3. 会計ソフトを選ぶ際のポイント
3-1 クラウド型かパッケージ型か
・クラウド型
インターネット上でデータを管理し、いつでもどこでもアクセス可能。自動アップデートやデータのバックアップがサービス提供側で行われるため、管理しやすい。
・パッケージ型
オフライン環境でも使える安心感がある一方、インストールやバージョンアップ対応などの手間がかかる。サポートやバックアップ体制を確認する必要がある。
3-2 金融機関や販売管理システムとの連携
自社の銀行口座やクレジットカード、販売管理システムとデータ連携が可能なソフトを選ぶと、取引情報が自動で仕訳に反映されます。手入力の手間とミスが減り、経理業務が大幅に効率化します。
3-3 導入費用やサポート体制
月額料金や初期導入費用、操作サポートの有無はソフトによって異なります。価格だけでなく、導入後のサポート体制や追加機能の充実度などを総合的に比較検討することが重要です。
3-4 操作性やインターフェース
経理担当者だけでなく、経営者自身も使いやすいかどうかは大切なポイントです。実際に無料体験版を試用してみるなどして、画面の見やすさや操作ステップを事前に確認するのもおすすめです。
4. 導入・運用のステップ
ステップ1:現状の業務フローを整理
まずは、どこでどんなデータが発生し、どのように処理されているのかを可視化しましょう。請求書の受け取りから振込、仕入・在庫管理、そして最終的に会計へと流れるプロセスを整理することで、「会計ソフトのどの機能が必要か」を明確にできます。
ステップ2:会計ソフトの選定・比較
前述のポイント(クラウド型 or パッケージ型、連携可能な金融機関やシステム、操作性、サポート体制など)をチェックし、自社のニーズに合ったものを複数ピックアップします。可能であれば無料体験版で操作感を試し、社内で意見を募りましょう。
ステップ3:初期設定・移行作業
会計ソフト導入時は、勘定科目の設定や残高の移行、取引先マスターや部門マスターの登録などの初期設定が必要です。ここでシステム構築を丁寧に行うことで、日々の業務がスムーズに回るようになります。必要に応じて税理士や会計ソフト提供会社のサポートを受けると安心です。
ステップ4:実運用と改善
導入後は、定期的に入力データのチェックを行い、運用マニュアルを整備しておくことで、ミスや混乱を減らせます。また、ソフトの活用度を高めるために、経理担当者だけでなく現場の管理職や営業担当にも基本的な使い方を理解してもらいましょう。運用を続ける中で、より効率的な業務フローが見つかることも珍しくありません。
5. どんぶり勘定から脱却して得られる効果
5-1 財務状況の“見える化”
収益構造やコスト配分が把握しやすくなり、経営判断のスピードと正確性が向上します。
5-2 コスト削減・利益拡大につなげやすい
過剰な在庫や無駄な経費を洗い出し、効率的な仕入や経費管理の仕組みを構築できます。
5-3 信頼性の確保
正確な会計処理を行うことで、金融機関や取引先、税務当局に対して信用力が高まります。
5-4 人材の活用度の向上
単純作業が減る分、経理担当者は分析や改善提案など、より付加価値の高い業務に集中しやすくなります。
まとめ
どんぶり勘定は、一見“楽”な管理方法に思えるかもしれませんが、会社の経営状況を曖昧にし、気づかぬうちに多くの機会損失やリスクを生んでしまいます。逆に、会計ソフトを導入して正確な数字を把握できるようになると、経営者はより迅速で的確な判断ができ、資金繰りやコスト管理も格段に向上する可能性があります。

導入のポイント
• 自社の業務フローを整理し、必要な機能・連携先を明確に
• 試用版や比較検討で、使い勝手やサポート体制もチェック
• 初期設定や運用ルールを整え、社内共有して定期的に見直し

どんぶり勘定からの脱却は、企業を一段階上のステージに引き上げる大きなきっかけにもなります。「忙しくて会計ソフトの検討を後回しにしている」という中小企業の方こそ、今が導入のチャンスかもしれません。早めに取り組みをスタートし、経営をさらに安定・成長させる足掛かりとしてみてはいかがでしょうか。

制作日:2025年3月

※本内容は制作日時点の情報を基に作成しております、また、記事の情報は当行が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その確実性を保証したものではございません。
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